音大生の就職について徹底解説!音大生就活を成功へ導く秘訣とは
こんにちは!ミュジキャリ編集部の井上タクヤと申します。
このページにたどりついたということは、あなたは今まさに音大卒業後の進路について悩みがあるのではないでしょうか。
中には「音大からは就職できないのでは」と思っている方もいるかも知れません。
音楽の道を貫くべきか、それとも一般企業への就職を考えるべきか…ここでは、音大生の進路に関して、さまざまなアドバイスをお伝えしたいと思います。
ぜひご一読いただき、今後の進路についての参考にしてください。
Contents
結論、一般企業への就職を視野に入れるべき
いきなりですが、音大生の進路としておすすめしたいのが、音楽以外の一般企業への就職です。
「せっかく音楽大学に入ったのに、一般企業に就職なんてしたくない」…。そんなふうに考えている方も多いと思うので、この点について、少し視点を変えて考えてみていきましょう。
文学部の人だって、全員もの書きになるわけではない
音大には、いったん音楽の道とは違う方向を目指し始めると、周りから「音楽の道を諦めた人」といった、ネガティブなイメージでとらえられる風潮があります。
これまでずっと、音楽のことだけを考えて生きてきた方にとって、このように見られることは苦痛を感じることでしょう。
しかし、音楽大学を卒業したからといって、音楽の道に絶対に進まなくてはいけない、という理屈はありません。
文学部を卒業した人は、みな小説家になるのでしょうか?商学部の人はみな経営者になるのでしょうか?
おそらくほとんどは一般企業で営業や事務といった仕事に就いているでしょう。
音大生も同じです。音楽を学んだからといって、音楽に関連する企業につかないといけないことはないですし、今では一般企業への就職を選択する人も確実に増えてきています。
企業就職しても音楽は続けられる
また、「一般就職=音楽に一切触れなくなる」、というイメージを持っているとしたら、それは誤りです。実際には、そんなことはありません。
休みの日に演奏会を行ったり、作編曲などで楽曲提供をしたり、ということは、空いた時間でいくらでも取り組むことができます。
ミュジキャリ創設者の白鳥は、営業職として忙しく働く中、しっかりとピアノを練習する時間をとり、コンクールでの優勝も果たしています。
直接音楽の仕事に携わらなかったとしても、音楽を続けることは一生できること。
音楽を続けられるかどうかは、どこに就職するか、で決まることではなく、自分自身で決めることなのです。
音楽を仕事にするのはそれなりに覚悟がいる
次に、音楽を仕事にするというのはどういうことか、考えてみましょう。
フリーの音楽家として活動する場合や、オーケストラなど音楽関連の団体に就職することを例にとってお話しします。
音楽で生計を立てるのは至難のワザ
みなさんは演奏や作曲など、音楽を仕事にしたくて音楽大学に入ったのだと思います。
しかし、「音楽を仕事にする」ということはどういうことか、具体的に想像できている人は少ないかもしれません。
仕事というのは、お客様にお金を払ってもらって初めて成立するもの。当然ビジネスとして、売上の管理や集客を自分で行って行かなくてはなりません。
演奏家であれば、どうやってお客さんを集めて、いつまでの期間にいくらぐらいの売上を見込んで…といった計算が必要になります。
ある程度売上を見込むためには、学生のころのように自分の好きな曲に取り組んでいくだけでは当然ダメで、どのような曲を演奏すべきなのか、ニーズはどこにあるのか、自分の音楽を届けるためにはどんな戦略が必要なのか、突き詰めて考えなくてはいけません。
そのようなビジネスとしての枠組みを確立するまでに挫折をしてしまい、キャリア形成に失敗してしまった…そんな方を我々はたくさん見てきました。
特に、音楽で身を立てたい理由が、ただ単に「音楽が好きだから」というだけだとしたら、かなり考えは甘いと言わざるを得ません。音楽家として生活していくのは難しいとは思います。
まずは、自分がどれほどの覚悟をもって、音楽で身を立てようとしているのかを意識してみた方が良いとでしょう。
そのうえで、音楽で生活をするために何でもやり、音楽家としてのビジネススキルを必死で身につけるつもりであれば、ぜひ挑戦すべきだと思います。
ちなみに、この記事を書いている井上も、音楽大学を卒業後、フリーで作曲や演奏などで生計を立てようと懸命に努力をしていました。
しかし、やはりビジネスとして確立する力が弱く、その後雑誌の制作などを行う編集プロダクションに入社し、ライター・編集者としてキャリアチェンジするわけですが…。
今ではライターの仕事も順調で家庭も持つこことができ、ライフワークとしての音楽も楽しめているので、あのときキャリアチェンジする選択をして、結果的に良かったと感じています。
もしあのまま音楽を軸にしたキャリアにこだわり続けていたとしたら…自分の場合は、未来はそう明るくはなかったと思います。
オーケストラ団体への就職も狭き門
自分ひとりで身を立てるのが難しくても、オーケストラや楽器店など、音楽系の企業・団体に就職できれば良い…そう考える方も多いでしょう。
しかし、音楽関連企業・団体への就職は、狭き門というレベルではありません。
オーケストラの場合、求人倍率は0.01にも満たず(つまり、100人に1人も採用されない)、多くの演奏家があぶれてしまっています。
また、音楽関連の職業として、楽器店やスタジオのスタッフ、音楽講師などの仕事などがあります。こちらであれば、たしかに手が届きそうです。
ただ、このような職種はほとんどが非正規雇用の求人となっており、長期的なキャリア形成という観点で、悩みを抱える人は少なくありません。
このように、音楽関連の進路を目指すには、どの企業・団体・職種でも長期的に不安定な環境を強いられる可能性が高いのが実情です。
「音大生は就職できない」はウソ
もし一般企業への就活を進めるとしても「そもそも音大卒で就職することができるのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。
ひと昔前(就職氷河期と呼ばれる時代など)は、就職するのは難しかったかもしれませんが、最近は少し事情が変わってきています。
3~4割の音大生が、一般就職を叶えている
就職率を掲載している国立音楽大学や上野学園大学のデータを見てみると、両大学とも直近の卒業生の進路において、約3.5割の人が企業・団体などに就職しています(国立音楽大学の場合、2018年は約4割)。
さらに、就職先の実績として、銀行や大手上場企業の名が上がっており、「音大生だから就職できない」というイメージとはほど遠い印象を受けます。
もちろん音楽大学によって就職率は多少変わってきますが、基本的な傾向は変わらないと考えてかまいません。
音楽の道を志す人が多いため一般的な大学の就職率とは確かに差がありますが、本人の意向次第で一般企業に就職することはいくらでもできる、ととらえていただきたいと思います。
今は一般就職しやすい時代
音大生が就職しやすくなっている背景は、「少子化」により新卒自体の数が減ってきていることと、「景気の上向き」により新卒求人が増えていることにあります。
たくさんの企業で新卒採用のニーズが高まっているのに、新卒者の数は減る一方…つまり、企業間で新卒者の取り合いが発生しているのです。いわゆる新卒有利の「売り手市場」と呼ばれる状態です。
企業側としては、学歴だけにこだわって採用しようすると競争が激しくなるため、高学歴ではない学生の受け入れも視野にいれて採用活動に取り組んでいます。
選考においても、学歴よりも、学生のポテンシャルを見て採用しようとする企業が増えています。
実際に、企業の人事の方に話を聞いてみると、学生の能力やスキルではなく、人柄やポテンシャルに着目して採用したいと話す方ばかりです。
考えてもみてください。例えば商学部で経営の勉強をしてきたとしても、何年も社会で働いている大人からすれば、学生が勉強して得た知識なんて、現実の社会では役に立たないことが多いと想像できませんか?
今現在学生がどんな知識を持っているか、というよりも「その学部でどんなふうに過ごしてきたか?」「スキルを習得し活躍する伸びしろがあるか?」といった観点の方が大事になってきます。
音大生も同じで、今現在仕事に関する知識や経験がどれだけあるか、ということより、「音楽大学でどのように過ごしてきたか?」「成長する意欲があるか?」という観点で、社会人としてのポテンシャルを見られています。
自分がこれまで頑張ってきたこと、こだわってきたことについてうまく自己アピールができれば、学歴にとらわれず、さまざまな企業で内定を得ることができるはずです。
音大生の就活方法
それでは、ここからは音大生の就活の進め方についてお話ししたいと思います。
就職しやすい時代といっても、そのまま何も考えずに就活してしまうと、内定をとることはできません。
ここでは就職活動にあたって、持っていたい視点や注意点について解説していきます。
音大生の就職活動の注意点
まずは、就職活動がうまくいかなくなってしまうパターンからお話しさせてください。
そのパターンとは、以下の3つです。
- 就職活動時期が遅い
- 先輩や同級生から情報を収集しにくい
- ポジティブに取り組めない
一つ一つ、説明していきましょう。
1.就職活動を開始する時期が遅い
一般的に、就職活動を始めるべき時期は、大学3年生の夏あたりから。
ですが、音楽大学生が進路を考えるのは、4年生になってからという人がとても多いです。
4年生の4月にはすでに本選考(ES選考、面接など)が開始しており、4年生になってから就活しようとしても、エントリー自体ができなくなってしまいます。
もちろん、その時期を過ぎてもエントリーを受け付けている企業もあるため、4年生から就活を初めて挽回できるチャンスは十分にありますが、選択肢は限られたものになってしまうでしょう。
理想的には大学3年の夏から始めるべきですが、音大生はそのタイミングで進路について考える人があまりいません。このように、動き出しが遅くなるため就職活動がうまくいかなくなるケースがとても多いのです。
進路については大学3年生のころから考えておき、一般就職も視野に入れて情報収集することがとても大事になります。
2.先輩や同級生から情報を収集しにくい
学生がほとんど就活に取り組む一般の大学に比べ、音楽大学では就活する人がどうしても少なくなるため、先輩や同級生から就活に関する情報を得る機会が少なくなってしまいます。
周りに就活している人が多ければ、「このあいだ行った会社のインターンが良かった」「あの企業の応募締め切りもうすぐだよ」などといった情報交換が自然とできますが、それがしづらいのが音大生の就活の不利な点です。
3.ポジティブに取り組めない
前述のとおり、音大には一般就職をネガティブにとらえる文化が存在しています。
それに加えて、就職活動もうまくいくことばかりではありません。インターンや本選考に応募しても、落ちてしまうことは当然あります。
せっかく就職活動に臨んだのに、うまくいかない、周囲にはよく思われないといったことが続けば、就職活動自体にポジティブに取り組めなくなってしまうでしょう。
音大生が就活するにあたって意識すべきこと
これらの障害をはねのけ、就職活動を成功に導くには、やはり音楽大学生独特の意識をもつ必要があります。
音楽経験のエピソードでも十分戦えると自信を持つこと
音大生の就職活動でとにかく大事なことは、「自分に自信を持つこと」です。
このマインドがあれば、就職成功にグッと近づくことができます。
それに、音大生は自信を持つべき良い経験を、他大学の人よりもすでに得ています。
それは、「ひとつのことにのめり込み、スキルを身につけるために人生を賭けて努力した」という経験です。
この経験はとても貴重であり、これ一本で戦えるくらい強いエピソードと言ってもいいくらいです。
自分が音楽に対して真剣に取り組んできたことを、そのまま自信につなげて、就職活動に取り組んでもらいたいと思います。
大学の外から情報収集をすること
先ほどもお話しましたが、音大生は、周囲の人から就職活動の情報を得ることが難しいもの。
そのため、情報は自ら集める意識で、SNSやWebを駆使して、積極的に外部から情報を得る必要があります。
Webだけではなく、大学のキャリアセンター、その他就活生をサポートするサービスを利用することも忘れないようにしましょう。
情報を得る行動をどれだけとったかが、就職活動が成功するかどうかに直結するといっても過言ではありません。
大手企業にも果敢にチャレンジすること
これまでお話ししたとおり、音大生だからといって大手企業に就職することができない、ということはありません。
また、就職できる・できないという以前に、大手企業の選考にはチャレンジした方が良いです。
それには、以下のような理由があります。
- 単純にチャンスがあるため
- 駒は多い方が良いため
- たとえ不採用になったとしても、経験を得られるため
特に3が重要で、たくさん企業を受けた方が、最終的に内定を取れる可能性が高まります。
落ちた選考も、なぜ落ちたのか振り返り理由を考え、次の選考ではそのミスを先につぶして臨むことができるためです。
つまり、選考を通して、自分を成長させるイメージです。演奏を上達させるときも、何度も同じ曲を練習したり、ミスがおきやすいフレーズを重点的に練習したりしますよね。それと同じことを、就職活動でもするべきなのです。
音大生の強み
ここからは、音大生の強みについてさらに掘り下げていきましょう。
コミュニケーション能力が高い
音大で学び生活していると、コミュニケーション能力は嫌でも高まっていくのではないでしょうか。
たとえば、他の演奏者とアンサンブルを行ったり、自分で仲間を集めて演奏会を開いたりなど、コミュニケーションを通じて一つのものを作り上げる経験を日常的に行っているはずです。
また、目上の厳しい先生との礼儀正しいコミュニケーションが必要とされることも、音大生ならではの経験です。
仕事上では、常にコミュニケーション能力が求められることに加え、他人を巻き込んでプロジェクトを推進する「巻き込み力」といった能力が必要とされることも多くあります。
このあたりは、音大生の得意分野として、大いにアピールすると良いでしょう。
集中力がある
音大生は、一つのことに集中して取り組む力が、ほかの大学生より優れている(そのような経験が必然的に多くなる)といえます。
楽器の演奏練習をしていたら、昼だったのかいつの間にか夜になっていたり、音楽に注意深く耳を方向け要素ごとに聞き分けたり、という経験はたくさんあると思います。
集中力は、仕事を進めるうえでとても大切な能力です。特に、新しいビジネススキルを習得するというシーンにおいて、集中力があるとないとではスキル習得にかかる時間が全く違います。集中力は、強みとしてぜひアピールしてもらいたい点といえます。
継続力がある
入学当初から(あるいは物心がついたときから)自分が修める楽器を決め、コツコツと鍛錬に励む音大生は、継続力の塊といっても良いでしょう。
目標に対して粘り強く取り組む姿勢は、ビジネスにとっても大事な姿勢です。
また、企業は、新卒の採用にあたって、「すぐに辞めないか」といった観点でも見ているため、継続力をアピ―ルするのは好印象を与える良い手段といえます。
音大生に向いている職種3つ
音大生の強みにある程度傾向があるように、それに付随して向いている職種も存在します。
また、新卒市場的に求人が多い(=就職しやすい)職種もあるので、おすすめの職種を3つピックアップして解説していきます。
ただ、決して以下の3つだけが、音大生がなれる職種、というわけではありません。あくまでも職種選びの参考にしてください。
営業
営業職は、自社の商品やサービスを、顧客に売ることが仕事内容になります。
新しい顧客を獲得する「新規開拓営業」、既存の顧客に新たな商品を提案する「ルート営業」、電話での営業アプローチを行う「内勤営業(インサイドセールス)」などさまざまな種類の営業がありますが、どのスタイルの営業でも基本的に、顧客が抱える課題を丁寧にヒアリングし、自社のサービスやプロダクトで解決できないか提案するのが重要になります。
営業職の特徴としては、具体的な売上目標を掲げて仕事を進めること。目標を達成すると「インセンティブ」と呼ばれる、特別の報奨金がもらえる場合が多いです。
そのため、負けず嫌いな人や、目標達成意欲の強い人におすすめです。コンクールでの入賞を目指していた人や、学内オーケストラへの選出などにこだわって努力していた人などに、向いているといえます。
管理部門
管理部門とは、人事・経理・総務などといった、事務系の職種が集まる部署のこと。営業や開発など、直接利益に直結する部門を支援する役割を担っており、「間接部門」や「バックオフィス」などとも呼ばれます。
仕事内容としては、細かい入力作業や文書の管理、データのチェックなどを行うことが多く、明確な数字目標を持つことはあまりありません。
ほかの人をサポートしたり、計画的にコツコツと地道に努力することが好きな方におすすめです。
企画・マーケティング
企画職とは、新しい商品やサービスを企画・開発する職種。マーケティングは、商品やサービスを売るための戦略を考える職種です。
どちらの職種も、アイディアをたくさん出す発想力や、新しいことに厭わずチャレンジする姿勢が必要になるため、音大生ならではのクリエイティビティが活かせる職種といえるかもしれません。
ただし、一つのプロダクトを完成させたり戦略を遂行したりするには、たくさんの人たちとの連携や、何ヶ月(場合によっては何年)にも渡って粘り強く取り組む忍耐力が必要になってきます。
そのため、最後まで諦めずやり切る推進力や、他人が求めることを想像して行動するのが苦ではない方におすすめです。
就活の難しさを感じたら、ミュジキャリにご相談を!
以上、音大生の就活に関するさまざまな情報をお伝えしました。
「正直、難しそう…」「自分には無理かも…」と感じた方もいるかもしれません。
ミュジキャリは、そんな就活に悩みを抱える音大生のために生まれたサービスです。
音大生就活のプロや、就活を終えた先輩内定者や音大卒社会人が、ES添削や面接対策などを行い、音大生の就活を全面的にサポートします。
また、就活中の音大生や、就活を終えた音大生内定者ともつながりが持て、就活に関する情報や仲間を見つける場としても活用いただけます。
「音大の経験を生かした就活をしてみたい!」という方は、ぜひ一度ミュジキャリを活用してみてください。
記事監修
白鳥さゆり
国立大学音楽系学部を卒業後、新卒でリクルートキャリアに入社。3年目で社内最年少のリーダーになり、MVPなどの表彰も複数回受賞。2012年、リクルートで働く傍ら出場した東京国際ピアノコンクールにて優勝。2016年の夏に独立し、音大生キャリアの専門家として全国の音大で講演をしながら、個別でキャリア相談に乗るなどの活動を行う。